3章 食と農業

○キューバの都市農業

食糧問題、環境問題など諸問題を一挙に解決できるものとして、農業を見直す必要がある。1991年のソ連圏の崩壊によりキューバは支援を失い、石油、食料、農薬、化学肥料、トラック、石鹸のような日常品にいたるまで、何もかもが途絶するという非常事態に直面した。

その後、国が市民へ国有地を貸し出し、市民による都市農業がゼロから始まる。10年後には市民数220万人を超す都市が有機農業で野菜を完全自給することに成功した。そして石油不足により車が自転車に代わり、ソーラーパネルなど自然エネルギーが生活を支えた。また輸入された肉食文化が野菜中心の料理に変わり、輸入薬品がハーブになった。また鍼やホメオパシーなどの伝統医法も認可される。こうした自然な医療は非再生資源をわずかしか使わず、人間や環境にもほとんど害を及ぼさない。また野菜やハーブを多く食べることになって、市民の健康状態も良くなった。

こうして都市農業で食糧不足が解消され、都市菜園が根づき、住民と菜園の関わりが深まるにつれ窃盗も大きく減った。また人々はゴミ捨て場をきれいにし、緑の景観へと変えた。都市農業は環境改善、生きがい対策、コミュニティの活性化など多くの社会的メリットを持つ。


○食の在り方

肉食

米を主食とした日本の伝統食は戦後、動物性タンパク質を多く摂る肉食生活へと変化していった。それ以来、肥満、糖尿病、高血圧、ガン、脳卒中、肝臓病、骨粗しょう病などが生活習慣病となり、食べ過ぎ、偏食、運動不足、過労、ストレス、喫煙、飲みすぎなどが絡み合い、病気がより身近なものとなっている。肉・卵・牛乳など動物性タンパク質はガンの増殖を抑える免疫を破壊し、ガン細胞を増殖させる。これら肉食ガンのほとんどは肉食を避けることで大幅に防ぐことができ、反対に菜食者の免疫は肉食の人物よりも強くなっている。

狭い場所に閉じ込めて飼育される工場の鶏、牛、豚などは、地球上で最も薬漬けにされている生き物と言われている。肉類はそもそも動物が排泄するはずの老廃物を含んでいるので、それを食べるとその肉の老廃物まで人体が負い込むことになる。一般に肉・魚・卵・牛乳・乳製品などは栄養価の高い食品と考えられている。これらの食品には栄養学的に理想とされるタンパク質が多く、体内で分解され、血肉となり、力をつけ、スタミナの源泉になると信じられている。しかし動物性タンパク質をとり過ぎると胃腸で分解されるまで多くのエネルギーを消費する。時間がかかるため腸内で腐敗醗酵を起こし、たくさんの毒素が生産され、活性酸素も作られる。これらは強烈な組織毒で、老化を早め、ガンを含め多くの慢性病の原因になる。また腸内で作られた毒素を解毒するためにも多量のエネルギーが使われる。筋肉を使ったり集中力を高めたりするエネルギーが消化のほうへ回されるので、結果としてエネルギー不足に陥る。食事から肉を取り除くとタンパク質が不足して健康に悪いのではないかと考えられるが、米、いも類、ブロッコリー、ほうれん草、えんどう豆、豆腐などからも良質のタンパク質が摂取でき、大豆は8つの必須アミノ酸をすべて含み、人体が吸収できる有効タンパク質の量も、肉より多い結果となっている。


動物愛護

そして肉食をやめることは動物への虐待行為も失くすことになる。現在の飼育工場では、動物をむごく扱うことが当たり前の運営形態となっている。食用に飼育される動物は住環境、餌、輸送、屠殺などで、人間が直視できないほど残酷な苦しみに耐えなければならず、市場できれいに包装されている肉からそのことに気づくことは少ない。仔牛肉(こうしにく)用の牛は生まれてまもなく母親から引き離され、一生を暗い場所で身動きのできない状態で過ごす。これらの子牛の多くは貧血、下痢、肺炎にかかっている。鶏もほとんどが工場の鶏小屋で何十万羽と収容されている。狭い金網の中に6羽ほどの採卵鶏(さいらんけい)を入れ、それが鶏に多大な心理的重圧を与えるため、つつき合いでケガをしないようにくちばしを焼き切る。工場では年間何億というオスの鶏が生まれ、生きたままゴミ袋に放り込まれ処分される。卵も産まず、肉としても経済価値がないからである。また毛皮、ウール、カシミア、革製品など服飾関係の生産の為にも動物が殺され、さらに動物実験の為に足を砕かれる動物や、金儲けの為にペットが大量生産され、売れ残りや捨てられたペットはガス室で殺される。

こういった例を挙げればきりがないが、栄養学的に見ても動物保護の観点から見ても動物を殺す必要はない。動物は自然の循環と秩序を構成する生き物であり、人間はその恩恵を受けているので動物とは共生していかなければならない。これは魚介類にも当てはまり、原始時代のように生存の為に動物を食べる必要があった時代とは異なるので、死んだ動物を食べることや皮を剥いで作った装飾物で身を飾ることは、道徳的に控える必要がある。


トランス脂肪酸

このように肉食は人間にとって不要ということを見てきたが、さらに現在の人間はどういった物を口にしているのかを見ていく。例えば油を多用した料理や菓子類を食べると顔に吹き出物ができ、胃がもたれることは多い。食後に胃がもたれることが体にとって善か悪かと聞けば多くの人は悪と答えるかもしれないが、そうとはわかっていてもその悪影響はほんの一瞬にしか感じず、再び食べる。誰もが口にする油食品には、その生成過程で形成される人体にとって有害なトランス脂肪酸が含まれている。これは加工食品を焼いたり揚げたりする過程や、油脂に高い熱を加えた場合などに発生するもので、悪玉コレステロール、動脈硬化、心臓疾患、ガン、認知症、不妊、アレルギー、アトピーなどを引き起こす。身近なものではマーガリン、バター、マヨネーズ、コーヒーのクリーム。菓子類ではケーキ、アイスクリーム、チョコレート、クッキー、クラッカー、菓子パン、ポテトチップス、ドーナツ。レトルト類ではカップヌードル、インスタントラーメン、缶のスープ、シチューやカレーのルー。ファーストフードなどではチキンナゲット、フライドポテト、フライドチキン、パイ。冷凍食品関係ではから揚げ、ケーキ、ピザ、コロッケ、天ぷらなどがある。また牛などの肉や脂肪にも少量含まれている。これらは現代人が日頃口にするものとなっており、スーパーマーケットで購入できるほとんどの製品に当てはまる。


添加物

普段口にする食品の中には様々な添加物が含まれている。その量は平均的な日本人で1年に約4キロにもなると言われ、なかには毒性のある物質も含まれている。一般的に見かけることの多い添加物には次のようなものがある。

ガムベース、軟化剤、イーストフード、ショートニング(植物油脂)、凝固材、かんすい、酵素、光沢剤、香料、酸味料、苦味料、乳化剤、pH調整剤、膨張剤、調味料、甘昧料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、防力ビ剤、乳酸。

例えばガムベースはガムで使用され、化学物質の塊と言える。軟化剤もガムを柔軟に保つために使用されている。かんすいは中華麺類の製造に用いられ、リン酸塩類には骨の脆弱化、腎障害などの恐れがある。光沢剤は食品のつや出しや防湿効果として使われ、安全性については研究が少なく不明な点が多い。酸味料のなかには急性毒性、染色体異常を示すものもある。

添加物には必ず何らかの毒性があり、中毒症状、発育遅滞、発ガン促進物質、遺伝毒性、血圧降下、胃陽障害など様々な病気を引き起こし、長期的に摂取し続けると自分だけでなく生まれてくる子供にも悪影響を与える。こういった添加物は「食品が綺麗に見えるために」「長期保存できるように」「おいしく感じるように」するために使用され、消費者に気に入られ、購入され、利益になることを目的に使用され、つまり金銭で成り立つ貨幣社会が生み出した産物といえる。


砂糖

現代人は昔とは比較にならないほど大量の砂糖を摂るようになっている。駄菓子、ジュース、缶コーヒー、チョコレート、ケーキ、菓子パン、アイスクリーム、ケチャップ、ドレッシングなど、加工食品には多量の砂糖が含まれている。砂糖の摂り過ぎもまた多くの現代病を引き起こす原因となっている。砂糖は血液を汚し、赤血球や細胞を崩壊させる。よって細菌に感染し病気になりやすい身体を作り、アトピー、アレルギー、吹き出物、冷え性、頭痛、貧血、便秘、虫歯、胃潰瘍、糖尿病、心臓機能低下などを引き起こす。

砂糖の過剰摂取は人間の健康にマイナスの影響を与えるが、現代人が大量に摂取している砂糖の多くは精製された白砂糖となっている。これはビタミンやミネラルなど栄養素がほとんどない精製糖であり、料理に使用すると空腹は満たされるが栄養が補充されることはない。代表的な物に菓子がある。砂糖は消化・吸収の工程が非常に速く、摂取後短時間で血液に運ばれ血糖値が急激に上昇する。そしてこういったことを繰り返すとやがて血糖値を下げるためのインスリンの分泌量が減り、いずれ分泌されなくなり、血糖値が高いままの糖尿病の状態になる。

栄養素がなく様々な病気を引き起こす砂糖は人間にとっては食べる必要はないが、脳のエネルギー源となるブドウ糖は、米やパンなどの穀物からも得ることができる。穀物は約90%がデンプンで構成され、デンプンはブドウ糖の分子が集まってできている。穀物の糖分はゆっくりと吸収されるため体への負担が少ない。ただ同じ糖分でもサトウカエデの樹液を煮詰めるとできるメープルシロップはミネラルが豊富で、血糖値を上げにくいものとなっている。ただこれも食べ過ぎには気をつけなければならない。他の良い糖分としてはナツメヤシを乾燥させて粉砕したデーツシュガーや甜菜糖(てんさいとう)などがある。


塩も調理によく使われるが、化学的なものではなく自然のものを食べるという観点から考えると、現在一般的に販売されている食卓塩ではなく、藻塩(もしお)や岩塩など自然のミネラルを多く含んだ自然塩が推奨される。藻塩とはホンダワラなどの海藻の成分を含んだ塩のことで、適度なにがり成分を含み、カルシウム、カリウム、マグネシウム、海藻のミネラル、海水酵素、活性炭などを含み毒消しの作用があるアルカリ性食品である。現在の一般的な低価格の食卓塩は明治時代に日露戦争の財源確保の為に始まった塩の専売制による流れもあり、効率化と大量生産によってミネラルが排除されたものが多くなっている。ただ海にプラスチックのゴミが浮かんでいる状況の場合は、食卓塩にマイクロプラスチックが含まれている。それは人体に悪影響を与える。


白米と発芽玄米について

一般的には白米が主食として食べられることが多いが、米を食するのであれば発芽玄米や玄米が適している。発芽玄米とは玄米をわずかに発芽させたもので、眠っていた酵素が発芽によって活性化し、出芽のために必要な栄養を玄米の内部に増やしていく。そのため玄米よりも栄養価が高くなる。

玄米は白米に比べ栄養価が高く、白米に含有されないビタミンB1やミネラルを豊富に含んでいるが、発芽玄米は更に栄養豊富で、食物繊維、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リン、鉄などのミネラルも含まれ、血圧上昇の抑制やストレス軽減などの働きを持つガンマアミノ酪酸が玄米よりも多く、白米の約10倍程度含有されている。基本的に未精製で発芽した穀物は栄養が多く含まれ、これは小麦などにも当てはまる。発芽玄米の作り方は玄米を水に浸けるだけである。


食べる量

次に食べる量についてはどうか。例えば外食で食べ過ぎて食べ疲れ、店で休憩したり重い胃を我慢しながら店を後にするというような経験は誰にでもある。これとは反対に油物をほとんど使わない料理を腹八分目以下の量で食べると、胃もたれもなく適度に空腹が満たされ、食後も快適に行動ができる。胃がもたれる食事ともたれない食事の食後の体調を比べると、直感的にどちらが健康的かはすぐにわかる。現在の常識ではたくさん食べることが良いとされているが、食後に現れるこの単純な症状から考えると、現在の食の常識は体を疲れさせるため、蝕むために食事をしている感がある。

では反対に全く食べなければ体にどういった症状がでるのか、ここからは1つの注目すべき点が見えてくる。現在花粉症は多くの人にとって悩みの種だが、1日だけ朝昼の食事を抜けばその日の花粉症を抑えることができる。しかし再び食事を取り始めると、鼻づまりや目のかゆみなどの症状が現れる。次に1週間食事を取らない断食を行えば、その期間は花粉症が治まり、吹き出物なども消える。そして再び食事を取り始めると今度は肌が一定期間すべすべで健康になる。

現在の食の常識では食事を取らないことは死を連想させるが、生まれてから働き続けの内臓を1日以上休ませることで内臓の機能を回復させる意味合いがあり、そうすることで体調が内面から向上する。

人間は近年、科学技術の進化で本来口にするべきではない化学物質が含まれた食物を食べ続けてきた。1回の食事からはその悪影響を感じることは少ないが、その蓄積が最終的に致命的な結果を招く。つまり現在の食の常識は病気になるために食べているのであって、全く食べなければ本来の健康な状態へ戻る。しかし人間である以上食べないわけにはいかない。このように両極端の症状について見てきたが、重要なことは何を食べてはいけないかではなく、人間は本来どういったものを、どれだけ食べるべきかを知ることにある。


マクロビオティックとビーガン

次にマクロビオティックという食の在り方について見ていく。マクロビオティックの特徴は、食材を丸ごと使い切り、皮や根も捨てずに調理することや、季節の作物や住んでいる土地の作物を主に食べること、そして食品添加物や農薬などが使われていない自然の食材を使うことや、過剰な下ごしらえなどをせず調理すること、また味噌・しょうゆ・塩など和の伝統調味料や調理方法を基本に料理することなどがある。マクロビオティックの基本的な食事の割合は次のようになる。

・穀物(主食)   40%〜60%
・野菜       20%〜30%
・豆類、海草類   5%〜10%
・味噌汁など    5%〜10%

肥満や生活習慣病の原因は動物性食品の食べ過ぎによるもので、ここまで見てきたとおり人間の体は肉や化学製品を食べるようにはできておらず、穀物・豆・野菜・果物など、土から出来るものを食べて生きていくようにできている。そしてこういった菜食主義者が動物に由来する食べ物や衣類などを一切断つことをビーガンと呼ぶ。ビーガンは穀物類、豆類、野菜、果物、きのこ類、海藻類のみを食し、豚、牛、鳥肉などの動物肉や、魚介類、卵、牛乳、乳製品、はちみつも食べず、また皮や毛を使った衣類なども身に着けない。ビーガンは食用、衣料用、その他の目的のために動物を苦しめたりすることは一切せず、動物性のすべての物を食べず身に着けずで生活する。

人間も自然の一部で、その循環に加わるのであれば、苦痛を与えて動物を殺し食物を得る行為や、樹木などに実った果実をすべて摘み取るような行為は、一方的に自然の循環を乱す行為であり控えなければならない。人間の食の在り方をどこまでも原点に戻って考えると、食事はあくまで最低限のエネルギー確保の為であり、現代のような食の在り方はあまりにも傲慢な在り方と言える。


食の在り方

現在世界には様々な食の在り方が存在する。肉を食べず穀物類と野菜中心のベジタリアン、マクロビオティック、ビーガン。食物酵素を多く取るため加熱調理は極力避け、生の野菜や果物を食すナチュラルハイジーン、ローフード、リビングフード。インドの伝統的医学で加熱調理も取り入れている菜食主義のアーユルヴェーダ。松の実やヨモギなど山菜や薬草などを主として食す中国の伝統的な医学の薬膳。果物を主食とするフルータリアン。水やフルーツジュースなど液体のみで栄養を取るリキッダリアン。これらの食形態にも共通することは「肉、白砂糖、添加物、人工的な食品などは避け、農薬や肥料が使われていない自然の食物を食する方が良い。」「消化を意識して食するほうが良い。」「体に無理のない量を楽しんで食するほうが良い。」ということである。他にも比較的共通して述べられてることがある。それは体の24時間周期に合った食事をすることが良いということ。

•午前4時〜正午 排泄の時間帯(体内の老廃物と食物カスの排泄にふさわしい時間)
•正午〜午後8時 摂取と消化の時間帯(食べることと消化することにふさわしい時間)
•午後8時〜午前4時 吸収と利用の時間帯(栄養が体に同化するのにふさわしい時間)

午前中に食べる物として良いのは果物など消化に良いもので、昼からしっかり食べることが良いとする食事法は多いが、このようにして肉食から菜食へ移行することで、現代人の健康が改善され、医療にかかる負担も減り、動物も守られることにつながる。

またマクロビオティックでは100回前後噛むことを奨めているが、よく噛むことは食べ過ぎを防ぎ、だ液の分泌によって虫歯を予防し、脳を活性化させ、胃腸の調子を良くし、快眠をもたらす。腹痛、胃もたれ、便秘、不眠は噛む回数が少ない場合にも起こることがあり、飲み込まなくても自然となくなるまで噛み続ける。食物は胃の中で粥状にされるので、口の中で粥状にすると内臓の負担が減り、栄養吸収も良くなる。

また食事を摂ると消化活動が起こるので、少なくとも就寝前3時間は食事を避ける。食事の約10分後、胃内の軟らかい物から順に次の十二指腸へ移動し始め、2〜6時間後には全て移動し消化は終了する。食物は胃で1ミリ以下にまで消化されるが、炭水化物、肉、魚などを組み合わせた食事は消化に8時間もかかり、多くのエネルギーを消費する。組み合わせの悪い食事は胃で完全に消化されず、未消化のまま腸に入れば腸内で腐り、病気の原因となる。人間は食べ物を消化するために多大なエネルギーを使っているので、脳や体を休める睡眠前に食べると寝ている間も内臓は働き続けている状態となり、疲れが取れなくなる。

ここまで食の在り方を見てきたが、現代人の病気のほとんどは食生活に問題があり、日々の体調は食事に大きな影響を受ける。肉類、魚介類、乳製品、卵などの動物性食物、添加物など化学製品、食用油による加熱料理、砂糖や人工的な食卓塩は避け、穀物、野菜、果物、豆類、芋類、薬草などの料理を食する。穀物は玄米などできるだけ未精製の全粒穀物を口にする。そして1回口へ運ぶごとに100回前後噛み、飲み込まなくても自然となくなるまで噛み続ける。こういった基本から離れれば体の内外に何らかの病状が現れる。


○自然農法

体や土地に有害な農薬や肥料を使わずに食材を栽培するため、自然農法を行う。これは福岡正信氏が提唱しているもので、人間が手を加えず様々な植物が生い茂り、昆虫など様々な生きものが生息した土地は肥沃で、そこからは栄養が豊富に含まれた作物が育つという原点に回帰した考え方。

福岡正信氏の田は、三十数年間1度も鋤(す)いたことがない。化学肥料、堆肥(たいひ)、消毒剤もかけたことがない。これで麦も米も約33m四方当たり10俵(600キロ)に近い収穫がある。

人間が鋤鍬(すきくわ)で耕せる深さは10〜20センチ。しかし草や緑肥の根は30〜40センチ以上も耕してくれる。根が深く土地に入れば、その根と共に空気も水も地中に浸透していく。その根や微生物の死滅で土は肥沃化し軟らかくなる。やがてミミズが増え、モグラもまた土の中に穴をあける。このように自然が栄養ある栽培環境を整えてくれ、土壌は永久に肥沃で、公害を発生する要素はない。自然農法の原則は、無耕耘、無肥料、無除草、無農薬。


○必要な土地の広さ

成人1人が市販の米20キログラムを食べきるのに、1日4合で計算すれば1ヶ月かかる。よって1人で年間240キログラムの米を消費することになる。米は300坪(33m×30m)の田から60キログラム1俵が7〜10俵取れるので、仮に8俵480kg取れるとすると、1人分の米240キログラムを作るには、約2分の1の150坪(22.5m×22.5m)の土地が必要となる。野菜は季節ごとに適切な種類の野菜を育てることを前提にすれば、3m×3mの畑で充分に1人分を収穫できると経験者は述べている。よって1人に対して1年間に必要な土地は次のようになる。

・米  150坪(22.5m×22.5m)
・野菜   3坪(3m×3m)
・合計 153坪(23m×23m)

1人約153坪(23m×23m)あれば1年間自給自足が可能になるという計算になる。福岡正信氏は1世帯4人が食糧を自給するには、10アール(約33m四方)あればよいと述べている。


○採種と保存

野菜の場合

①追熟(ついじゅく)
追熟とはしばらく常温で置き完熟させることで、未熟な野菜や果菜(かさい)から種を採るときはできるだけ追熟させるほうが良い。未成熟果は完熟すると種が発芽しやすくなる。

②洗浄
種に付着した果肉はザルに取って水洗いして落とす。果肉が残っているとそこからカビが発生し、種の腐敗の原因になる。また種の周りのヌメリなどは発芽を抑制する休眠物質なので、取り除いた方が発芽しやすくなる。

③乾燥
中身が充実していない種は水に浸けると浮くので沈んだ種だけを保存する。しかしカボチャなどの種は良いものも浮く。洗浄後、種をザルに広げ十分に乾燥させる。カビ防止に日光に当てる時は短時間に留め、基本的に陰干しが良い。

④保存
採取した種は2〜3年程度は保存可能で、湿気のこもらない容器に入れて冷暗所や冷蔵庫などで保存する。湿気対策には紙封筒など通気性の良い容器を使用し、除湿・調湿効果のある木炭などを一緒に置くとよい。容器には品種と採種日を記入しておき、年々発芽率が悪くなるので早めに蒔くよう心がける。


果樹の場合

 ①洗浄

種に果実の繊維が付着している時は落とす。残った果肉からカビが発生し種の腐敗の原因になることがある。

②保存
土の中と同様に暗く冷たい場所で保存する。湿らせたペーパータオル、砂や土など保水性のある素材で種を包み、乾燥を避ける。果樹の種は干乾びると死ぬ。果樹には冬を経験しないと発芽しない「低温要求種子(バラ科植物)」が多く、室内なら冷蔵庫で保存することで低温処理を済ませられる。大体1〜2ヶ月ほど4℃位の低温状態に置けば発芽が可能となる。また食べた後すぐに種を植え、春の自然な発芽を待つことも良い。バラ科植物には、サクランボ・ウメ・モモ・アンズ・ナシ・ビワ・リンゴ・プルーン・スモモ・アーモンドなどがある。